コラム
2016.11.17
歯周病が原因で起こる病
本日は、歯周病が原因で起こる病です。
歯周病は歯を支えている歯茎や骨が歯周病菌によってダメージを受け、進行していくと骨が溶けてしまい、最後には歯が失うことになる恐ろしい病気です。
歯周病原菌の出す毒素により歯茎が炎症を起こし、それがのちに歯を支えている骨を破壊していきます。
しかし歯周病は歯を失うだけではありません。
最近の研究では、歯周病原菌の出す毒素が血管を巡り、全身的な影響として以下のような悪影響を及ぼすことが分かってきています。
① 糖尿病
② 心疾患(狭心症・心筋梗塞など)
③ 脳梗塞
④ 誤嚥性肺炎
⑤ 早産・低体重児出産
⑥ 骨粗しょう症
① 糖尿病
歯周病菌は腫れた歯肉から容易に血管内に侵入し全身に回ります。血管に入った細菌は体の力で死滅しますが、歯周病菌の死骸の持つ毒素は残り血糖値に悪影響を及ぼします。
血液中の内毒素は、脂肪組織や肝臓からのTNF-αの産生を強力に推し進めます。
TNF-αは、血液中の糖分の取り込みを抑える働きもあるため、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを邪魔してしまうのです。
以前から糖尿病の人はそうでない人に比べ、歯肉炎や歯周炎になっている人が多いという疫学調査が複数報告されていますが、最近では歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。
歯周病と糖尿病は、相互に悪影響を及ぼしあっていると考えられるようになってきたのです。
② 心疾患
心筋梗塞や狭心症の虚血性心疾患は、心臓の冠状動脈にアテローム性プラーク(血管沈着物)が形成され閉塞されていくことで生じる病気です。
血管内に侵入した歯周病原性細菌やその病原因子などが、血流に乗って冠状動脈に達するとアテローム形成が加速化し、心血管の病気が発症しやすくなります。
歯周病にかかっていると、心血管疾患の発症リスクは1.15~1.24倍高まると言われています。
③ 脳梗塞
動脈硬化は心臓の血管(冠動脈)だけではなくて脳の血管にも起こります。虚血性心疾患の原因が動脈硬化で、その動脈硬化の原因の一部が歯周病であるとすれば、同じく動脈硬化を基盤に発病する脳梗塞もまた、歯周病と関係があると考えられます。
④ 誤嚥性肺炎
気管に入った唾液中の細菌などが肺に感染して起こる肺炎。
高齢者に多く飲み込む力や咳反射が低下しているため、食べ物や飲み物を肺の方へ飲み込んでしまい、同時に唾液やプラークなども気管に入り肺炎の原因ともなります。
⑤ 早産・低体重児出産
歯周病が悪化すると、炎症を引き起こす物質が生み出され、この炎症を引き起こす物質の血中濃度が高くなると、胎盤を刺激します。
すると、妊婦の身体は出産の準備が整ったものと勝ってに判断してしまい、そのため陣痛や子宮の収縮が起こり、早産を引き起こす可能性があるのです。
最近の調査では、歯周病の妊婦は約5倍も早産リスクが高いことが明らかになっています。
⑥ 骨粗しょう症
歯周病になった歯肉で産生されるサイトカインには、骨代謝に影響を及ぼすものがあり、歯の喪失と骨密度の減少には関連があるという研究報告があります。
また、骨粗しょう症の人が歯周病にかかると、歯周組織の歯槽骨が急速に吸収されることで症状が進行しやすくなる可能性が知られています。